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微生物学的検査(空中落下菌・浮遊菌・付着菌)

微生物学的検査(空中落下菌・浮遊菌・付着菌)

環境モニタリング

施設の微生物清浄度のモニタリングとして、 空中浮遊菌、落下菌、付着菌の測定を行います。 環境微生物の測定方法は、国際規格ISO14698-1クリーンルーム及び関連制御環境第一部「一般原則及び方法」に準拠して行います。 測定方法は、次の方法(培地、メーカー)で対応しております。

対象 測定器(培地) メーカー 吸引量
空中浮遊菌 MAS-100 オリエンタル酵母工業 1,000L
RCSエアサンプラー オリエンタル酵母工業 1,000L
BIO SAMP MBS-1000 オリエンタル酵母工業 1,000L
落下菌 PDA サブロー
血液寒天培地
日水製薬
デンカ生研
日本ビオメリュー
オリエンタル酵母工業
-
付着菌 クリーンスタンプ
DDチェッカー
パームスタンプチェック
スワブ法(拭き取り法)
日水製薬
デンカ生研
日研生物医学研究所
-

たとえば医薬品製造におけるグレードAの要求される清浄度の空中微生物は次のようになっています。

対象 最大許容粒子数/m3 測定粒子径(μm) 空中微生物数 CFU/m3
0.1 0.2 0.3 0.5 1 5
JP14 - - - 3,530 - - <1
USP24 - - - 3,500 - - 3
FDA - - - 3,520 - - <1
EU-GMP - - - 3,500 - - <1
ISO(class5) 100,000
23,700 10,200

3,520

832 29 なし

環境モニタリング豆知識

1. 微生物モニタリングの意義

微生物モニタリングの目的には次の2つの役割があります。ひとつは製造領域の環境が適切に管理され、管理レベルの範囲内で運転されているかを確認すること(環境評価)であり、もうひとつは製造している製品の環境からの微生物汚染リスクの評価(製品リスク評価)です。管理レベルの範囲内で運転されているかを確かめるには十分な測定ポイント数でサンプリングすることが必要となります。

また、製造作業中の環境(作業員を含む)が定められた基準値にあるかどうかをモニタリングすることにより、製品への環境からの微生物汚染のリスクを評価することができます。環境評価では測定ポイントの平均値で評価することが望ましく(EU-GMPannex1)、製品リスク評価では菌数測定結果の最大値でその製品のリスクを評価すべきです(FDA無菌ガイダンス;cGMP)。

環境微生物のモニタリング方法については厳密にこの方法でなければならないという規定はなく医薬品の品質規格を試験する方法とかなり異なります。一般には、規格値と試験方法は一体であるべきですが環境微生物モニタリングではこの原則が当てはまらず、たとえば表面付着菌の測定では接触平板法やふき取り法があり菌の回収率も異なります。環境微生物モニタリングでは、環境に存在する微生物をすべて検出することを求めていませんし技術的にも不可能です。一定の測定方法でその製造環境が基準内の衛生管理状態にあることを確認することが重要ですから、微生物モニタリングを行う装置、方法については、モニタリングの目的及び対象物によって適切な装置および方法を選定すればよいことになります。

2. 微生物モニタリングの手順

微生物モニタリングにおいてはまず手順書を決めておかなければなりません。この中には、モニタリングの頻度、種類、場所、評価方法と基準、基準を超えた場合のとるべき対策などを決めておく必要があります。

また、製造品目の変更、改良などで製造施設のレイアウトが変更されたりした場合は、手順書の見直しが必要になります。

3. 微生物サンプリング方法と装置

次に微生物サンプリングの主な方法と装置についてISO14698-1をベースに表1に概略を記載します。

【 表1 微生物サンプリング方法と装置 】
方法 対象 方式 装置(方法)
落下菌測定法(受動的)
Passive microbial sampling devices
浮遊微生物 自然落下
Sedimentation
寒天平板培地
落下菌測定法(受動的)
Passive microbial sampling devices
浮遊微生物 衝突サンプラー法
Impact and impingement samplers
スリット
サンプラー法
ピンホール
サンプラー法
アンダーセン
サンプラー法
遠心型(RCS)
サンプラー法
ろ過サンプラー法
Filtration samplers
—–
表面付着微生物
Biocontamination of surfaces
付着微生物 コンタクトプレート法 Contact
sampling devices
ふき取り法(スワブ法) Swabs

4. 評価基準

環境微生物のモニタリング評価基準について各国の規格では表2・表3のように規定しています。これらの基準のうちどの基準に合わせて評価していくかを決めておく必要があります。

【 表2 各国の環境微生物のモニタリング評価基準 】
各国の規格 主な規定
USP1116 ・管理環境の重要度に基づくサンプリング頻度(日本薬局方とほぼ同じ)
・管理環境における浮遊微生物
・機器および設備の表面微生物
・作業員の衣服の表面微生物
EU-GMP ・作業中の微生物モニタリングの参考限界値
日本薬局方 ・サンプリング頻度
・環境微生物の評価基準
【 表3 各国の規格別空中微生物および付着微生物の基準表 】
規格:グレード
WHO-GMP
USP1116
EU-GMP
JP15
空中微生物 表面付着微生物
CFU
/m3
CFU
/ft
落下菌
測定法
CFU/4Hr
直径90mm
プレート
機器・設備 手袋 着衣
CFU/
24~
30cm2
CFU/
直径
55mm
プレート
CFU/
24~
30cm2
CFU/
5本指
CFU/
24~
30cm2
WHO-GMP:A
cGMP 100
USP1116:M3.5
EU-GMP:A
JP15:A
<3
1
<3
<1
<1
-
-
<0.1
-
-
<3
1
-
<1
-
-
-
3
-
<1
<3
-
-
<1
-
-
-
3
-
<1
<3
-
-
<1
-
-
-
5
-
-
cGMP 1,000 7 - 3 - - - - -
WHO-GMP:B
cGMP 10,000
USP1116 :-
EU-GMP:B
JP15:B
10
10
-
10
10
-
-
-
-
-
5
5
-
5
-
-
-
-
-
5
5
-
-
5
-
-
-
-
-
5
5
-
-
5
-
-
-
-
-
-
WHO-GMP:C
cGMP 100,000
USP1116:M5.5
EU-GMP:C
JP15:C
100
100
<20
100
100
-
-
<0.5
-
-
50
50
-
50
-
-
-
5(10;床)
-
25
25
-
-
25
-
-
-
10
-
-
-
-
-
-
-
-
-
20
-
-
WHO-GMP:D
USP1116 :M6.5
EU-GMP:D
JP15:D
200
<100
200
200
-
<2.5
-
-
100
-
100
-
-
-
-

50
-50
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-

アラートレベルとアクションレベル
微生物モニタリングにおける評価システムとしてAlert and action levels(警報基準と処置基準)があります。警報基準ならびに処置基準とは以下のことを意味します。

・警報基準:微生物の数(必要に応じて菌種の同定を含む)に対して設定した基準値をいい、この値は予知される問題点を早期に警告するものであり、その設定レベルを超えた場合には直ちに是正処置を必要としないが、原因究明のための調査をする必要があります。

・処置基準:微生物の数(および必要に応じて種)に対して設定した基準値をいい、この値を超えた場合には直ちに調査を行い必要に応じて是正処置(清掃消毒)をとらなければなりません。

5. 測定頻度

施設の環境微生物モニタリング頻度については、無菌操作、無菌管理を行う環境とその周辺で、定期的なモニタリングを行い、特に無菌医薬品が環境空気と直接接触する重要区域においては、作業シフトごとのモニタリングが必要となります(表4)。作業シフトとは、同じ作業者又はグループによる一定の作業又は作業時間をいい、通常、12時間以内をいいます。グレードが低いゾーンについては、その製造品目の安全性、環境微生物の分布、増減状況がわかるような頻度でそれぞれの施設で決めていけばよいといえます。

【 表4 施設の環境微生物モニタリング頻度 】
製造区域 主な規定
重要区域(グレードA) 作業シフト毎
重要区域に隣接する洗浄区域
(グレードB)
作業シフト毎
他の洗浄区域(グレードC、D)
・製品や容器と接触する区域
・製品や容器と接触しない区域
週2回
週1回

6. 微生物の同定

医薬品製造プロセス工程管理における微生物の同定
医薬品製造プロセス工程管理において微生物モニタリングおよび検出菌の同定が要求されています。無菌医薬品の製造に当たっては、微生物学的管理が適切に維持されていることを保証するために、環境、設備及び作業員に対する微生物学的モニタリングを適切な頻度で行う必要があります。また、分離された微生物については、必要に応じて性状検査(汚染菌を識別できる程度に区分するための手段をいい、日常管理では、属レベルまでの分類でよいが、必要に応じて種レベルの同定を行う)を行います。

同定手法については、日本薬局方第14局第二追補で「遺伝子解析による微生物の迅速同定法」が追加されました。非無菌医薬品の微生物学的品質特性においては、人体に特に影響を与える微生物として、特定微生物(大腸菌、サルモネラ、緑膿菌および黄色ブドウ球菌等)が指定されており、医薬品によってはこれらの菌が混入していないことを検査同定しなければなりません。

微生物の環境監視プログラムについて、無菌処理区域においては微生物の存在について日常的に監視しなけらばなりません。サンプリングに当たっては妥当性確認がなされた方法(ISO14698-1)及び校正された機器を使用すること。サンプルは部品や製品が環境に露出する区域(表面及び接触する空気)から収集すること。すなわち、付着菌検査と浮遊菌(落下菌)検査を実施すること。また、製品へのリスクの査定(出てきた菌が人体に対して安全であるかどうか)ができるように環境フローラ・分離菌の定期的な特性付け(characterization)いわゆる微生物を識別できるレベルに区分することを行わなければなりません。

また,FDAから2004年に発効された無菌処理のガイダンスcGMPでは、

「重要区域とそれに隣接する清浄区域さらに作業員のモニタリングは、種specis(場合によっては属genus)レベルの微生物の定期的な同定作業を行うことが望ましい。いくつかの報告で、環境の微生物トレンドデータを取ることにより、非管理区域と低レベル管理区域から重要区域への微生物の移動が証明された。たとえばClass100,000(ISO8)のような低レベル管理区域での微生物相の違いを識別するための適切な同定プログラムを確立すれば、そのような傾向を検知するのに有用であろう。稼動中の設備や周辺域の微生物の種(場合によっては属)までの同定は最低限プログラムに入れる必要がある(それにより、その洗浄と消毒の処置が引き続き有効であることを実証できる) 。遺伝子解析手法は、従来の生化学的・表現形質による解析より間違いがなく厳密であることは証明済みである。」

とあり、微生物の数量だけでなく、検出された微生物を同定することにより、検出された微生物の安全性はもとより、汚染源の把握と対策に役立てていくことがよりいっそう求められています。

食品工場における微生物の同定
食品中の菌数や菌の種類を調べて、食中毒や腐敗・変性を防いだ安全な食品であることを示す必要については言うまでもありませんが、汚染源になり得る、環境、作業員のモニタリングとそこから得られた微生物の同定(特に病原性微生物か否か)を行うことも同じく重要です。食品工場では、設備・器具や従業員の手指の拭き取り検査を頻繁に行う必要があります。特に、大腸菌、サルモネラ、腸炎ビブリオ、黄色ブドウ球菌などは選択培地がすでに市販されているのでそれを用いて検出することにより容易にモニタリングが可能です。

当社では、微生物環境測定の専門スタッフがお客様の施設の環境モニタリングを実施し、得られた結果を客観的に評価し、菌同定まで一貫して行うことができます。

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